【企業事例付き】ポジショニングとは?マーケティングで重要な概念と作成方法を解説

目次

ポジショニングとは何か?

ポジショニングの定義

ポジショニングとは、自分たちの商品やブランドを市場の中でどの位置に置くかを決め、消費者にどんなイメージを持ってもらうかを計画することです。簡単に言うと、たくさんの商品がある中で、自分たちの商品を選んでもらうために、その商品がどれだけ特別で魅力的かをアピールすることです。

言い換えればポジショニングは、消費者に「この商品が一番いい理由」を伝えるための重要な戦略となります。

STP分析との関係

ポジショニングは、マーケティングの基本戦略である「STP分析」の一部です。STP分析は、次の3つのステップで構成されています。

セグメンテーション(Segmentation): 市場をいくつかのグループに分け、それぞれのグループの特徴を調べます。

ターゲティング(Targeting): その中から、自分たちが狙いたいグループ(ターゲット)を選びます。

ポジショニング(Positioning): 選んだターゲットに対して、自分たちの商品がどんなに魅力的かを伝えるために、その商品の位置を決めます。

このように、STP分析は消費者にどうやって商品を売るかを考える基本的な流れであり、ポジショニングはその最後の仕上げともいえる部分です。

ポジショニングの重要性

ポジショニングは、マーケティングでとても重要な役割を果たします。今の市場では、たくさんの似たような商品があるため、消費者がどの商品を選ぶかは「その商品がどれだけ魅力的に見えるか」が大きなポイントになります。

良いポジショニングができれば、消費者はその商品を他の競合商品と区別しやすくなり、特別な価値があると感じやすくなります。

ポジショニングの基準と方法

ターゲットに基づくポジショニング

ターゲットに基づくポジショニングは、特定のお客様のグループに向けて、商品をどう見せるかを考える方法です。まず、市場をいくつかのグループに分け、自社の商品がどのグループに最も合っているかを調べます。その後、そのグループに一番響くようにメッセージを作り、お客様が「この商品を選ぶ理由」を分かりやすく伝えます。

例えば、若い人向けの商品なら、SNSを使って彼らが好むスタイルや言葉を使い、商品を魅力的に見せることが大切です。ターゲットがはっきりしていると、その人たちが求めるものに合わせて商品のアピールポイントを変えることができます。

製品属性やベネフィットに基づくポジショニング

製品の特長や、それを使うことで得られるメリットに基づくポジショニングは、お客様が商品を選ぶ時に注目するポイントを強調する方法です。商品の機能やデザイン、価格などの具体的な特長だけでなく、その商品を使うことでどんな良いことがあるかを伝えます。

例えば、スマートフォンなら「カメラが高性能」「バッテリーが長持ちする」といった特長を前面に出し、それがどうお客様

競合との相対的なポジショニング

競合との相対的なポジショニングは、自社の商品が他の会社の商品と比べてどのように優れているかを示す方法です。他社の弱点を見つけ、自社の強みを目立たせることで、自社商品の相対的な魅力をお客様にアピールすることができます。

例えば、あるシャンプーが「他のシャンプーよりも自然な成分を使っている」とアピールする場合、他社のシャンプーが化学成分を使っていることを背景に、自社のシャンプーがより良い選択であることを伝えます。競合商品と比較することで、自社の商品をより魅力的に見せることができます。

ポジショニングマップの作成方法と注意点

ポジショニングマップとは?

ポジショニングマップは、市場の中で自社の商品やサービスがどの位置にあるかを図にして示すためのツールです。2つの異なる要素(軸)を選び、それに基づいて自社と競合他社の商品を配置します。

これにより、自社が市場の中でどこに位置しているのか、競合と比べてどの点で違いがあるのかが一目でわかります。このマップを使うことで、他社と差をつけられるポイントや新しいビジネスチャンスを見つけることができます。

ポジショニングマップ作成のステップ

軸を決める

最初に、ポジショニングマップを作るために2つの軸を選びます。この軸は、お客様が商品を選ぶときに大事にするポイントや、他社との違いがはっきりする要素を選ぶと良いです。例えば、「価格」と「品質」、「デザイン」と「機能」などがよく使われる軸です。

自社と競合を配置する

次に、選んだ2つの軸に沿って、自社の商品と競合他社の商品をマップ上に配置します。これで、自社の商品が市場の中でどの位置にあるのか、競合と比べてどのような強みや弱みがあるのかがわかります。

空いている市場を探す

マップを見ながら、まだ誰も手をつけていない市場がないか探します。その空いている場所は、新しいビジネスチャンスになる可能性があり、そこに商品を出すことで競争が少ない中で成功するチャンスが広がります。

マップ作成時の注意点

ポジショニングマップを作るときは、次の点に注意が必要です。

選んだ2つの軸が関係していないことが大事です。例えば、「価格」と「高級感」は関連性が高いので、別の独立した要素を軸に選ぶと良いです。

マップを作るときは、会社の視点ではなく、お客様が何を大事にしているかを考えることが大切です。お客様がどんなポイントで商品を選ぶかを考え、それに基づいて軸を決めます。

競合分析の方法

ポジショニングマップを作る前に、競合の分析が大切です。競合分析では、競合他社の強みや弱み、商品の特長やターゲット市場を調べ、自社とどう違うかを理解します。これにより、自社がどんな位置を取るべきか、どうやって他社と差別化するかがわかります。

競合分析の具体的な方法は次の通りです:

競合を特定する→自社と同じ市場で競争している企業をリストアップします。

競合の商品やサービスを調査する→価格、品質、機能、デザインなど、競合商品の特長を調べます。

競合のマーケティング戦略を分析する→競合がどんなマーケティング活動をしているかを調べ、うまくいっている点や改善できる点を見つけます。

マップの活用とリポジショニングの検討

ポジショニングマップを作ったら、そのマップを使って戦略を考えることが大事です。マップを見て、自社の商品がどの点で他社と違うかを理解し、その強みをもっと強調する方法を考えます。

また、市場の状況が変わったときには、リポジショニング(再ポジショニング)を考えることも重要です。リポジショニングでは、商品の特徴やターゲットを見直し、より有利な位置に自社を配置し直すことを目指します。これにより、競争が激しくなっても、競争力を維持することができます。

ポジショニング戦略の成功条件

ポジショニング成功のための4つの条件

ポジショニング戦略がうまくいくためには、次の4つのポイントが大切です。このポイントを押さえることで、お客様に商品やサービスの魅力をしっかり伝え、競争の中で強いポジションを築くことができます。

ターゲット市場のサイズがちょうどいいか

ポジショニングが成功するには、狙う市場の大きさが適切であることが必要です。市場が大きすぎると競争が激しくなり、小さすぎると売り上げが期待できないかもしれません。自分たちの商品やサービスがどのくらいの市場で売れるかを見極めることが重要です。

お客様にポジショニングがちゃんと伝わるか

自分たちの商品やサービスのポジションが、お客様にきちんと伝わることも大事です。お客様がその商品の特長や良さを正しく理解し、その価値を感じてもらえるように、わかりやすいメッセージを発信することが必要です。

また、ブランドのイメージや広告の内容がブレないようにすることも、お客様にポジショニングを伝えるためには欠かせません。

お客様が共感できるか

ポジショニングが成功するには、お客様がそのポジショニングに共感できることが必要です。お客様が「この商品は自分にぴったりだ」と思えるようなメッセージや商品の特長を提供することが大切です。お客様が共感し、応援したくなるブランドになることで、長く支持されるようになります。

企業のポジショニングと商品のポジショニングが一致しているか

会社全体のイメージや目指していることと、商品のポジショニングが合っていることが大切です。企業の考え方やビジョンと商品が一致していれば、お客様はそのブランド全体に信頼を持ちやすくなります。逆に、企業のメッセージと商品がずれていると、お客様が混乱したり信頼を失ったりすることがあります。

実在する企業でのポジショニングの事例

ユニクロの事例

ユニクロは、「シンプルでミニマルなデザイン」と「優れたコストパフォーマンス」をポジショニングの中心に据えています。ポジショニングマップでは、横軸に「シンプルさ(デザインのミニマリズム)」、縦軸に「コストパフォーマンス」を設定し、ユニクロは「高いシンプルさ・高いコストパフォーマンス」の領域に位置します。

ユニクロの成功には、普段着だけでなくビジネスユーズの層も取り込んだ点が大きく影響しています。ビジネスシーンでも使えるシャツやパンツなど、シンプルで機能的な商品を提供することで、ビジネスパーソンにも支持されるようになりました。これにより、幅広い顧客層にアピールし、日常生活だけでなく、オフィスでも着られるブランドとしての地位を確立しました。

H&M
H&Mは、トレンドを重視したデザインを比較的低価格で提供しています。このマップ上では、H&Mは「中程度のシンプルさ・高いコストパフォーマンス」の位置にあります。H&Mは、ファッショナブルでバリエーション豊かなデザインを強みとしながらも、シンプルさにおいてはユニクロよりやや低い位置にあります。

ZARA
ZARAは、最新のファッショントレンドを取り入れた派手なデザインが特徴で、比較的高価格な商品も多いです。このマップでは、ZARAは「派手さ(低いシンプルさ)・中程度のコストパフォーマンス」の位置にあります。ZARAはトレンド性とデザインの華やかさを重視しているため、シンプルさに関してはユニクロよりも大きく異なるポジションに位置しています。

ネスカフェの事例

ネスカフェは、「家庭用」と「オフィス用」という2つの異なる市場で強力なポジショニングを築いています。ポジショニングマップでは、横軸に「利用シーン(家庭 vs オフィス)」、縦軸に「価格帯」を設定します。ネスカフェは、「家庭とオフィス両方での利用」と「中価格帯」の領域に位置します。ネスカフェの家庭用コーヒーは、インスタントやカプセル式コーヒーマシンなど、多様な価格帯で手軽に楽しめる商品を提供しています。

オフィス向けの市場では、ネスカフェは「ネスカフェ アンバサダー」プログラムを通じて、企業向けに手軽で美味しいコーヒーのサービスを提供しています。このプログラムでは、オフィスに専用のコーヒーマシンを設置し、従業員がカプセル式やインスタントコーヒーを簡単に楽しめる環境を整えています。これにより、オフィスワーカーが短い休憩時間でも高品質なコーヒーを手軽に楽しむことができるようになり、忙しいビジネスシーンでも利用しやすいと評価されています。価格帯も中価格帯に位置し、コストを抑えながらも上質なコーヒー体験を提供することで、多くの企業に導入されています。

ジョージア
ジョージアは、缶コーヒー市場において強力なポジショニングを持つブランドです。このマップでは、「オフィスでの利用」と「低価格帯」の領域に位置します。ジョージアの缶コーヒーは、自動販売機やコンビニエンスストアで手軽に購入でき、低価格で提供されているため、オフィスワーカーにとって手軽なコーヒーとして広く受け入れられています。特に、オフィスでの短い休憩時間に最適な選択肢として強いポジションを確立しています。

UCC
UCC(上島珈琲)は、「家庭用コーヒー」と「オフィス用コーヒー」の両方で展開していますが、特に「オフィスでの利用」と「高級価格帯」を強調したポジショニングを持ちます。UCCは、オフィス向けに提供する業務用コーヒーマシンやドリップコーヒーで、プレミアムな味わいを提供することを重視しています。このマップでは、「オフィスでの利用・高価格帯」の位置にあり、味や品質にこだわる顧客層に支持されています。

ポジショニング戦略を実行する際のポイント

ターゲットの軸を決める

ポジショニング戦略を成功させるためには、まず誰に向けてアピールするのか、ターゲットとなる顧客層をしっかりと決めることが大切です。これが「ターゲットの軸を決める」という作業です。例えば、若者向けなのか、それとも働くビジネスマン向けなのかによって、商品のアピールポイントが大きく変わってきます。

ターゲットを決める際には、次のような点を考えると良いでしょう。

  • 年齢層→若い世代をターゲットにするか、年配の方をターゲットにするか。
  • ライフスタイル→アクティブなライフスタイルを好む人か、リラックスを大切にする人か。
  • 消費習慣→毎日使うものを好む人か、特別なときに使うものを求める人か。

このようにしてターゲットを明確にすることで、その顧客層に響くポジショニングができるようになります。

市場調査・消費者調査(顧客サーベイ)を行う

ターゲットを決めたら、市場や消費者についてしっかり調べることが必要です。市場調査や消費者調査を行うことで、どんなニーズがあるのか、他社がどんなポジショニングをしているのかを知ることができます。これにより、自分たちがどこで勝負できるのか、他社とどう差別化できるかが見えてきます。

市場調査では、以下のような情報を集めることが大切です。

  • 市場規模→自分たちが参入する市場がどれくらい大きいか。
  • 競合分析→他社がどんな製品やサービスを提供しているか。
  • 消費者ニーズ→ターゲットとなる顧客がどんな問題を抱えているか、そしてその解決に何を求めているか。

また、消費者調査では、実際のターゲットとなる顧客にアンケートを取ったり、インタビューを行うことで、より具体的なニーズや期待を把握できます。これによって、自分たちのポジショニングがどれだけ顧客に響くかを予測することができます。

ポジショニングの検証とリポジショニング

ポジショニング戦略を実行した後も、それがちゃんと効果を上げているかどうかを定期的にチェックすることが重要です。市場や消費者のニーズは常に変わるので、初めに決めたポジショニングがずっと有効であるとは限りません。だからこそ、定期的に自分たちのポジションを見直し、必要に応じてリポジショニング(ポジショニングの見直し)を行うことが求められます。

リポジショニングとは、現在のポジションを変更し、新たな市場や顧客にアピールすることです。例えば、新しい競合が登場したり、ターゲット層のニーズが変わった場合、従来のポジションでは不十分になることがあります。そんな時には、新しいポジションを見つけ出すことで再び市場での競争力を高めることができます。

ポジショニングを検証する際には、次の点に注意しましょう。

  • 市場シェアの変動→自分たちの市場シェアがどう変わっているか。
  • 競合の動向→他社がポジショニングをどう変えているか。
  • 顧客の反応→ターゲット顧客が自社のポジショニングをどう受け取っているか。

このように、ポジショニング戦略は一度決めたら終わりではなく、常に市場の動きに合わせて見直していくことが重要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?ポジショニングは、商品やサービスが市場でどんなふうに見られるかを決める大切なポイントです。ターゲットをはっきりさせ、市場や消費者をしっかり調べて、ポジショニングを定期的に見直すことで、競争の激しい市場で自分たちの強みを最大限に引き出すことができます。

もし、自社のポジショニングをもっと強化したい、またはブランド戦略を見直したいとお考えでしたら、当社の「コンセプト戦略サービス」をぜひご利用ください。あなたのビジネスにぴったりの戦略を提案し、成功へ向けて一緒に取り組んでまいります。

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